小説

1.

ハセが目が覚めると見知らぬ天井が目に入ってきた。

体のあちこちが痛い。

自分の体に目をやると痛々しい包帯が巻かれていた。

包帯の巻き方にかなり雑さが目立つ。

「俺・・・そうかあの豚野郎に・・・」

痛みとともに記憶もあぶり出てきた。

体を起こすとそこは牢獄だった。

ハセの目の前に丈夫そうな鉄格子があるんだから間違いないだろう。

監禁されたと自覚すると同時にハセの耳に乱れた呼吸の音が聞こえた。

音の方へ目をやると横のベットで自分と同じくらいの少女が顔を赤くして苦しそうな呼吸をしていた。

「おい・・・お前・・・」

ハセがそう呼びかけると、少女はこちらが起きたのに気づいたようでこちらに顔を向けるとさっきの苦しそうな表情を噛み殺したような笑顔でつぶやいた。

「気がついたんだ・・・よかった。」

呼吸を乱しながらそういう少女にハセは気がついた。

この不器用な手当は全て、この病床の少女が施してくれたものだということに・・・。

その瞬間ハセの表情がたちまちに赤くなった。


一目ぼれだった。



第14話「小早川ゆたか救出最前線」



2.

シェンタウンのポケモンセンターでは岩崎みなみと高良みゆきがジョーイに事の次第を説明していた。

「そう、じゃあさっきの爆発はやはり・・・このマルマインの・・・」

「はい。このココドラとマルマインのトレーナーに心当たりございませんか?」

みゆきの丁寧な質問にジョーイは即答した。

「ハセくんよ。13歳くらいの男の子なんだけど・・・。その子一緒じゃなかったの?」

みゆきとみなみは黙って首を振った。

ジョーイはそうとだけ言うとどこか不安そうに下を向いてしまった。

「どうかされましたか?」

「・・・最近、そのハセくん様子が変だったから・・・。」

「変といいますと?」

「大地震が起きた後に毎日のように炭鉱の方へ行ってたみたいなの。別にバトルの練習ってわけでもなかったみたいだしちょっと気になってたのよね?」

「大地震・・・。」

みゆきが呟くように言った。

心当たりがあったわけでもないが、だが確かに引っかかることではあった。

大地震のことはここに着いてからすぐに町の人々に聞いていた。

それが3日前。

そして・・・

「ゆたかがさらわれたのは4日前・・・。」

みゆきに続きみなみが呟くように言った。

関連性があるかどうかは皆無であるが、ただ無いとは思いたくなかった。

ここまで手がかりを追ってきた彼女たちにとってどんな些細な事象も目が離せず、大事な友人につながる糸なのだ。

「日にち的にはピッタシですね?」

「まさか、あの人たちゆたかを監禁するために穴を掘ったんじゃ、その時に使ったダイナマイトか何かであんな地震が・・・」

しかし、みなみの推理はみゆきが首を振ったことで否定された。

「それじゃ、遅すぎます。誘拐犯がまず一番に懸念するのはいかに人質を匿うか・・・。連れ去った後にそんな悠長なことはしないでしょう・・・。」そう言うみゆきであったが手掛かりが少ないのも事実であった。

「あの・・・あなたたち誰かを探してここを・・・」

さっきからの二人の会話から事態を把握できないでいたジョーイはたまらず聞いてみた。

みゆきとみなみは小さくはいと答え、頷いて見せた。

「実は、私たちの仲間が謎の人たちにエアームドで連れ去られまして・・・目的は不明なのでこちらとしては手の打ちようがなく、とりあえず人を伝ってここへたどり着いたんです。」

「じゃあ、もしかしてハセくんもその謎の人たちに・・・」

ジョーイがそこまで言うと、ポケモンセンターの自動ドアが開いた。

そこからゴーグル帽子を被った女性が妙に慌てた様子で入ってきた。ゴーグル帽の女はジョーイの姿を見つけるなり彼女に詰め寄った。

「ジョーイさん、会いたかったですぅ!!」

最初は嵐のようにやってきた来客に混乱していたジョーイだったが声を聞いて瞬時に記憶が蘇ってき、彼女が何者なのかを思い出すことができた。

「ユリシさん・・・!」

「お久しぶりです!おつきみ祭り以来ですね!私、徹夜でジム戦とか色々やって大急ぎで来ちゃいましたですよぉ!」

まるで、旧友と再会するかのような二人の態度に完全にみゆきとみなみは置いていかれてしまった。

「あの・・・ジョーイさん、こちらの方は?」

会話の合間を見てみゆきが聞いた。

するとジョーイは少し申し訳なさそうに、ユリシを紹介した。

「彼女はトウハトシティでジムリーダーをしているユリシさんよ?」

「・・・どうも!」

ジムリーダー・・・みゆきとみなみが通った町の中でも一つはポケモンリーグ公認ジムというのがあった。

しかし、ゆたかの行方ばかり気にしていたのであまり気には留めなかったが、それでもそのジムの運営を任せられている責任者だということは分かっていたので、二人は無意識に謙遜してしまった。

「ジムリーダーさんでしたか。それは挨拶が遅れて失礼しました。私高良みゆきといいます。こちらはご近所に住んでいる岩崎みなみさん・・・。」

つい、いつもの感じで自己紹介してしまったことを少しみゆきは後悔した。

妙なところで不審に思われるのはゆたかの安否の為にも避けたかったからだった。

しかし、みゆき不安はよそにジョーイも、このユリシと呼ばれるジムリーダーも特別気にした様子でもなかった。

「タカラミユキさんにイワサキミナミさんですかぁ!これはこれはこちらもご挨拶が遅れてしまったです。さっきジョーイさんから紹介がありましたからあまり言うことはありませんですが、ユリシです。どうぞよろしくです。」そう言いながらユリシはみゆきとみなみに握手を求めた。

「それでジョーイさん、私数日前におおおおおおおおおおおきな地震があったって言うからすっ飛んできたんですけど・・・」

かなろオーバーに言うユリシであったが、自身の話題とともにジョーイには別の事柄の不安が頭の中に再び居すわった

「あ、地震のこともそうなんですが・・・」

少し迷ったがジョーイはユリシに行方不明のハセのこととそれ以前の彼の妙な行動を打ち明けることにした。



3.

頭が妙に重かった。

ハセは頭を左手で抱えながら、右手でこの地下の見取り図を作っていた。

なんとはなしであるが少なくともこの独房周辺の地理はわかったつもりでいた。

ハセは一息つけると、そばで横になっているゆたかに声をかけた。

辛そうなゆたかを気遣って声をかけると同時に少し打ち合わせをしておきたかった。

ここから二人で脱出する打ち合わせを・・・。

ゆたかは返事を小さくしながら、ハセの方へ顔を向けた。

ハセの足元の床に目をやるとなんだか地図のようなものは書かれていたのを見て、彼がここから脱出するつもりであるというのを察した。

ハセが脱獄計画を練り始めたのはハセがここに入ってから本当にすぐのことだった。

ハセはまず、壁・床に耳をあてた。 昔から聴覚だけは異常に優れており、彼曰くそれが唯一他人に自慢できることであった。

ハセが手掛かりにしたのはズバリ足音である。

この地下の兵隊の数が4人だということはすぐにわかった。

この4人はまるでゲームに出てくる村人のように一定の位置でしか動こうとしなかった。

それが途絶えるのは見張り交代の時だった。

まず、ハセは自分が目覚めたことを確認しにきた兵士に着目した。

身長は170ほどあった細見の男で、ハセはその男の歩幅を仮ではあるが推定し、その足音の数と音でこの独房から何M先のどの方向へ行ったのかをじっくりと観察・・・聴察したのかと聞いた。

「歩幅約70センチ・・・スピードは遅くなく速くなく・・・。それを方角を変えず独房出て左にに約17歩かぁ・・・大体10M強ってところかな?案外エレベーターは近いみたいだな。だけどエレベーターで悠長に脱出できるとは思えない。それに・・・」

ハセは横目でゆたかを見た。

体の弱い彼女を連れて脱出するのはリスキーだった。

ならば、まず自分一人が脱出し、それからココドラたちを連れて助けに行く・・・・。それも甘い。もしかしたら自分たちが脱出したことによって奴らがなぜかここに残ったゆたかに何をしでかすか分からなかい。ここの長はどこか頭の悪そうな男だということをハセは思い出した。

ああいうタイプはまずい。キレるとそれこそ何をするかやるか分からないタイプであるとハセは本能で察した。奴のブーピッグも要注意だ。

となれば、ゆたかの体調の回復を待つ・・・ハセが選んだのはまずゆたかの安否だった。

出会ってまだ間もないが、それだけハセに与えた彼女の印象は大きいものがあった。

最初熱を測ろうとした時もかなり胸が高ぶってなかなかに手が震えたものだった。

「ごめんね。私は大丈夫だから・・・ハセくんだけでも先に・・・」

そこまで言うとゆたかは激しく咳きこんだ。

どうやら風邪らしい。

ハセはゆたかの背中をさすりながらこれからのことを再考した。

せめてココドラがいてくれたら・・・

ハセは傷つき倒れたパートナーの心配をした。

そしてその日は一晩様子を見ることにした。

その時ハセは首に巻いていたはずの襟巻がないのを今さら気がついた。


ポケモンセンターでも当然のように夜が来た。

みなみは近くにいる可能性が高いゆたかの事を気に掛けながらみゆきやジョーイに促されるまま布団に入った。

しかし、眠れるはずもない。

みゆきは横で規則正しい寝息を立てている。

今から起きてこっそりゆたかを探そうか・・・

そう考えたが止めた。

こういう町の夜は暗い。

今鉱山が使われていないのならなおさらだ。

そこから手掛かりを見つけるのは難しい。

ならば日が高いうちに手掛かり探しをするのが遥かに効率がよい。そのために今は十分な休息をとることだ。

彼女にもそれぐらい分かっていた。だがそんな理性とは裏腹になかなかに寝付けなかった。

「ゆたか・・・。」



4.

翌朝・・・。

昨日のうちにジョーイから事情を聞いていたユリシは少し考えた結果ゆたかとハセの捜索に加わることにした。

彼女がここに来た理由は前からこの場所になぜかやってきたピッピの謎を解明すべくここに通っていたのだが、先日の大地震の話を一昨日聞かされ、もしかしてピッピが現れるという鉱山まで崩れたのではないか心配になったということだった。

結果見事に崩れていたわけだが・・・

それからみゆきはユリシから最近コノミタウンでの謎のノズパスの暴走について聞かされた。

「へぇそうだったんですか。急に何の前触れもなく・・・。妙な磁波でも出ていたのでは?」

そうかなぁと少し合点のいかない感じにユリシは首をかしげた。

「うーんかがみさんの話だとそんなことはないとかいってたんですけどねぇ・・・」

「へ?」

ユリシの言葉の中の一つにみゆきは激しく反応した。

「今・・・なんと?」

「へ?」

あまりのみゆきの食いつきにユリシは逆に驚いた。

「今誰から聞いた話だと・・・」

「あぁ・・・だからかがみっていう女の子です・・・ツインテールでツリ目の・・・・なんでも旅のトレーナーらしくって私が一昨日中に来れなかったのもこの人と強引にジム戦をしていたからでですぅ。」

みゆきは一瞬言葉をなくした。

自分の親友がこの世界に来て同じように戦っている。みゆきの心にスッと光が差し込んだ気がした。

「うん。みゆきさんよりも少し年下かなぁ?まだ子供って感じでしたですぅ!」

「・・・!!」

その瞬間みゆきの頭上に見えない重いものが落ちてきた。

あまりの衝撃にかけていた眼鏡までも割れそうだ。

「あれ?みゆきさん?どうしたですか?」

「いえ・・・ただ一つ訂正させていただくとそのかがみさんというのは私の友人で年齢も私と同じなので・・・」

それを聞いてユリシは初めて自分の失言に気が付き、目を潤ませながら両手をつき、床に頭をこすらせながら謝罪した。

「すすすすすすすすすいませんですぅ!!!あ、その・・・えーと・・・別にみゆきさんが老けているとかそういうんじゃなくてですねぇ・・・えーと大人な感じがしてしまってですね・・・だからだから別に老けてるとか老けてるとかそういう意味じゃないんです。すいませんです。私の配慮が足りないばかりに・・・たとえそう思わなくても言っておけば良かったです。かがみさんはあなたと同じくらいの若さでとか・・・」

「いえ・・・もう結構ですから・・・頭をお上げになってください。でないと私・・・私・・・」

半泣きになりながら謝るユリシとそれを聞きながら徐々に涙目になっていくみゆき。どちらも泣きそうだ。

そこへジョーイとみなみがやってきた。

そこで行われていた異様なやり取りに二人はかける言葉がなかった。

そして、内にそれは収まりみゆきはジョーイから預けていたモンスターボール3つを受け取った。

みなみも既に二つジョーイからモンスターボ―ルを受け取っていた。

「じゃあ、とりあえず例の鉱山にでも行ってみます?」

みゆきの提案にみなみとユリシの異議はなかった。

しかし、その提案を反対するかのように奥からマルマインとココドラが出てきた。

「コォーコォー!」

「マールル!」

ココドラはみなみの足に頭をこすりつけながら何かを訴えた。ココドラの口には何かマフラーのようなものは加えられている。

「このマフラー・・・ハセくんのだわ・・・。」

ジョーイの言葉で一同の意見が一斉に合致した。



5.

地下独房の朝はハセが思った以上に寒かった。

こんな薄っぺらい毛布一枚ではゆたかが体を壊しても仕方がない。彼はホットコーヒーを優雅に啜りながら朝食を持ってきた衛兵を睨みつけた。しかし、衛兵はそんな視線を気にすることなく呑気に一つ欠伸を出した。

衛兵が運んできた朝食はどこか傷んでそうなコッペパンが一つとぬるいスープだ。

ハセはなるべく綺麗なパンをゆたかに渡した。

「いいか?これの食器を引き取りにきた兵士が来たら作戦実行だからな?」

「うん・・・頑張るよ。」

ゆたかの熱は下がることを見せなかった。

本来ならこのような体調のゆたかに無理はさせてくなかったが、一晩ここで過ごしてみて分かった。

ここでのゆたかの回復は見込めないと・・・。

地下独特の寒さに不十分な食事・・・。このままでは取り返しのつかないことになる。ハセはそう思った。

ゆたかのことは昨晩から聞いていた。ゆたかには仲間が二人いること。しかし、遠くにいてここへ辿り着くのはかなり時間を要するだろうということ。そして、ゆたかはポケモンをゲットしたことがないということ。

それよりハセが不可解だったのはゆたかがどこか別の世界に来たということだった。信じがたい話だったが彼女が嘘をつくような人間だとはとても思えなかった。

なによりハセに衝撃を与えたのは彼女が自分より二つも年上だったということだった。


そんなことを考えていると足音が聞こえてきた。

ハセの話では足音一つ一つにも個性のようなものはあるらしい。

人は歩く際でも姿勢、歩幅、歩き方の癖などから違う音を出し、その音から個人を特定できると言った。

「コーヒー野郎だ。」

「え?」

ハセがそう言うと先ほどコーヒーを啜りながら朝食を持ってきた男が姿を見せた。

どうやら食器の回収にきたらしい。

ハセは黙ってパンが乗った皿を男に手渡した。

「ん?パンが残ってるじゃねえか?」

「ゆたかの食べ残しだよ?良ければ兄さんにやるけど?」

ハセはそう言うと男は少しの動揺を見せた。

このコーヒー野郎が顔を紅潮させたゆたかをいやらしい目つきで見ていたのをハセは知っていた。いわゆるロリコンというやつなのだろう。

「バカ野郎!ガキの食い残しが食えるかよ!?言われてるんだろ、食事の残しは許さないってよ!残した皿持って怒られるのは俺なんだからな!」

男は少し虚勢を張ったように怒鳴った。もうひと押し・・・。ハセは確信した。

「だとよゆたか・・・。ほれ食べろ?」

「う、うん。」

ハセからパンを受け取るとゆたかは小動物のようにチビチビと食事を始めた。

「んっ・・・んむ・・・」

合間に漏れる声は確実に男の声を揺さぶったであろう・・・。

「ごめんなさい。もう・・・」

ゆたかは3口ほど口に含んでからそれを更に戻した。ゆたかが齧ったパンの先にはゆたかの唾液が光っていた。

そのテカりをコーヒー野郎は見逃さない。

「なぁ悪いけどよぉ・・・兄さん今日は勘弁してくれ。こいつもうこれで限界みたいだ。これ持って帰って怒られるってんならあんたが食って帰ればいいじゃねえか!」

男は舌打ちをしながらハセからパンを受け取った。

「しゃ、しゃーねーな。今回だけだぜ?」

五分の一とも減ってないパンをコーヒー野郎はちゃんとゆたかが齧った跡の部分のみを口に入れた。

その瞬間男に妙な違和感が生まれた。

このパンは兵士たちも食べたパンと同等だったのだが先ほど食堂で食べたパンとは確実に何かが違う。

コーヒー野郎がその違和感に気づいたのを見てハセはまるで悪魔のように囁いた。

「あぁ食っちまったなぁ・・・。」

「・・・!なんだと?」

ハセの緩んだ口もとを見ながら彼の頭の中に嫌な予感がしていた。

「ガキだと思ってちゃんと荷物検査しねえからだよ?」

そう言いながらハセは空のガラス管を取り出した。

それを見たコーヒー野郎の顔の血の気が引いた。その反応を見てハセはニヤリとした。

「これ、言わなくても分かるな?」

「まさか・・・ど・・・毒?お前みたいなガキがどうして・・・?」

ハセはそれには答えずもう一つポケットからガラス管を取り出した。中には透明な液体が入っていた。

「ほれ、これが解毒剤だ・・・。鍵開けてこれを取りに来いよ?」

明らかな罠・・・。コーヒー野郎にもそのことは重々に承知していた。今、自分が食べたこれが毒だとも限らない・・・。逆にこれが毒でないという確証も得られない。

「何迷ってんだ?テメェが死んじまったらお咎めもなにもねえだろ?逃がしても上司に殴られる程度で済む。」ハセは相手の表情を窺いながらさらに続けた。「ちなみにあんたが口にしたのは銅だ。ただし、小銭に使われるような銅ではなく毒性の強い銅・・・。お前はこんな子供が毒なんて入手出来るわけがないと思ってんだろうが俺の育ちは鉱山。こんな鉱物手に入れるなんて朝飯前なんだぜ?」

それを聞いたコーヒー野郎は顔を白くしながら、震えるその手で腰に提げていた鍵束を手に取った。そして、震えながら牢の鍵を開け、勢いよくハセの持っていた液体の入っていた方のガラス管を奪い取るとそれを口にした。

「・・・?」

コーヒー野郎は気がついた様だった。

「これはスープ?朝食に用意してたスープじゃねえか!」

謀られた・・・。そう直感し、ハセの方を睨みつけた・・・が、既に彼とゆたかの姿はなかった。不用心に開きっぱなしになっていた牢のドアが音を小さく立てながら揺れていた。


脱出した二人は小走り程度の速度で出口に向かっていた。

なるべく音をたてずに移動しているのはもちろん、相手に気づかれないという意味もあったがそれ以上にハセの耳を大いに活用するためでもあった。

昨日の時点でエレベーターの位置は確認していたのでそこへと向かっていた。

ただし、エレベーターに乗るためではない。脱出劇においてエレベーターに乗ることの危険度はハセも承知していた。

目的はその先にあった。

「ハセくん、すごいね?私、ちょっと怖かったよ!」

少し辛そうに息をしながらゆたかが言った。

「・・・それは俺がか?それとも作戦の失敗が?」

ハセのイジワルな問いにゆたかは少し答えるのを躊躇ったあと、呟くような声で「両方かな?」と言った。

その答えにハセは「そうか」としか答えなかった。脱出の為とはいえゆたかをこんな形で利用したことに彼は懺悔の念でいっぱいだった。

コーヒー野郎を脅かす作戦を立案したときゆたかは正直あまり乗り気ではなかった。かといって反対もしなかった。彼が自分のために作戦を立てていることを知っていたからだ。

もちろん、コーヒー野郎が口にしたパンに銅なんて入っていない。ハッタリだった。

ハセはポケットに入っていたガラス管を見て今回の作戦を思いついた。たまに変わった小石を見つけたらこのガラス管に入れるためだった。

ガラス管といってもそこいらのガラスとは違い、石を入れて転がしても傷一つつかない特製品だ。

そのガラス管には微かに粉末が入っていた。おそらく石同士が削れて出来たものだろう。ハセはそれを利用しようと考え、よりリアル感を出すためゆたかのパンにそれをふりかけ、ゆたかはハセの指示通りに粉末が掛かっていない箇所だけ食べた。

それを見て無意識に警戒心が解かれたコーヒー野郎はゆたかの食べさしということもあり、口にした。

そして、このイチかバチかの賭けに勝った。

「でも、あの人がこれが偽物だって見破ったらどうしてたの?」

「その時はまた別の手があったさ。あのコーヒー野郎はあのデブ野郎に報告しただろうし・・・だったら今度はその男がこっちに出向いてくると思ったんだ。弱い者いじめが好きそうな性格だったし、そういう男の方が手玉にとりやすい。最初、この偽毒作戦の成功率は3割あればいいって言ったけど、この脱出作戦は少し時間を要しても成功率は俺の中で8割あった。」

「へぇ・・・。」

ゆたかは感嘆の声を漏らした。自分より年下なのにここまで頭が回り、自信満々な少年を心の底からすごいと思った。

エレベーターの前を過ぎたのはゆたかがハセのことをそんな目で見ていたおよそ10秒前のことだった。

ハセの狙い通り、そこには階段があった。だいたいエレベーターと階段はセットにあるものだと彼が言っていた予想が当たった。

少し後ろを気にしながら彼は階段を上に登って行った。コーヒー野郎が大声をあげながらこちらを追いかけている。

その距離は二人が地上に上がった時点でもう3メートルもなかった。騒ぎに気づいて他の兵たちもハセ達を待っていた様に階段の周りを取り囲っていた。数的には10数名だろうか。

しかし、ハセは勢いを止めることなく突っ込んだ。その表情にはどこか自信に充ち溢れたものが見えた。

あまりの無謀な行動に動揺するゆたか。目の前では兵たちが二人を捕まえようと両手を伸びていた。

「ちょ・・・ハセく」ゆたかの言葉はそこで止まった。顔が埋まったからだ。

ハセは素早くゆたかを胸に抱きかかえるとスライディングの要領で兵たちの足元を抜けて行った。

「炭鉱マンの力舐めんな!」ハセはそう言いながら素早く立ち上がると再びゆたかの手を取って走り出した。

気づけば、足音を盛大に立てていた。

その時だった。不意にハセの動きが止まり、そのまま倒れこんだ。

彼に手を取られていたゆたかもバランスを崩し膝を地面につけた。

ハセの顔色を見るとさっきまで自信満々の眩しい表情とは一転して青白くなっていた。

後ろから気味の悪い笑い声が聞こえてきた。だがサブロウではないようだ。

カイゼル髭を蓄えた長身細身の男がドクケイルを後ろに従えて立っていた。

「てめぇ・・・」

ハセが悔しそうに絞り出すような声を出した。どうやら”どくばり”を食らったらしい。

コーヒー野郎との距離が近くなったせいで焦ってしまった。ハセはそう思った。今、耳を澄ませばドクケイルの羽にはばたきの音が聞こえた。

「脱獄の策は弄じていたようだが・・・脱出策までは思いつかなかったのかな?」

カイゼル髭の言葉にハセは悔しそうに舌打ちをした。上階の警備まで彼が知る由もない。言うなれば脱獄後のことは運任せの面が強かったのだ。

「2度とこんなふざけた真似が出来ぬように少し痛めつけてやれドクケイル!」

「ケケケケ」

ドクケイルの笑いが聞こえる。万事休すか・・・ハセがそう思った時だった。ゆたかがハセを庇うように前に出た。

「ハセくんは悪くないんです。全部全部・・・私が仕組んだことだから・・・お願い、ハセ君はいじめないで?」

「・・・ゆたか。」

「困りましたねぇ?貴女のような方にそこまで言われるとこちらとしても手が出しづらい。致し方ありません・・・では彼女のご要望にお応えして今回の主犯であると主張する貴女に痛い目に遭って戴きましょう。」

「ぐっ・・・!」

カイゼル髭の男の言葉にハセの白い肌が灰色になろうとしていた。最悪だ。今ゆたかの体は回りが思うほどに芳しくないはず・・・。それはスライディングの際彼女を抱いた時に彼女の体温で分かっていた。

それを今”どくばり”なんて喰らえば・・・。

起き上がろうと両の掌を床につけ、腕に力を込めた。だが思うように動かない。

その時だった。

ハセとゆたかの横を緑色の生物が横切った。

その生物は大きい尻尾でドクケイルを叩きつけた。

あまりの一瞬の出来事にゆたか、ハセはもちろんカイゼル髭を始めとする一同もなにが起きたか分からなかった。

「キモ・・・リ?」

床に叩きつけられたドクケイルの横にはもりとかげポケモンのキモリが立っていた。

このキモリがゆたかたちの危機を救ったのだろう。

それから間もなくして足音が床を伝ってゆたかの耳に入ってきた。

「ゆたか!」

みなみだった。体を紅潮させ、荒い息遣いをするゆたかを見て彼女の顔は険しくなり、周りを取り囲む男たちを睨むように見渡した。

「彼女を・・・ゆたかを返してもらいませんか・・・?」

声は抑えたものがあるが、明らかにその中には怒りがあったようだ。

カイゼル髭の男はドクケイルがまだ戦えるのを確認してからみなみの方へ半歩前へ踏み込んだ。

「これはこれは・・・お迎えの方ですかな?よくここがわかりましたな?この場所は人目に付きにくい場所だと思いますが?」

カイゼル髭の問いにみなみはすぐには答えなかった。まだその答えがこちらへ来ていなかったからだ。その答えは間もなくしてみなみの足元にやってきた。

「コォー!」

「ココドラ!」

ココドラが声を発すると同時にハセが呼びかけた。

その声にココドラは嬉しそうにハセの下へと駆け寄った。

「なるほど・・・」カイゼル髭が駆け寄るココドラを見ながら言った。

そのココドラに道案内させたのですね?主人の臭いを辿ってきたとするなら納得がいきます。・・・が、腑に落ちないのはなぜあなたが来たということ・・・地元の警察に言えば済むことではありませんか?」

カイゼル髭は淡々とまるで第3者のような振る舞いでしゃべった。

「ゆたかは友達だから・・・ゆたかを守って・・・助けるのは当然です。」

「なるほど・・・。しかし一人でというのがあまりご聡明な判断とは言い難いですな?」

ドクケイルはターゲットをみなみに変更したようであ、さきほどの笑い声を彼女に向けてかけた。

みなみはそれに全く動じず、手にモンスターボールを握った。気づけば足もとにキモリが身構えていた。

「み・・・なみちゃん。」

ゆたかは必死に体を動かそうともがいた。しかし体は鉛のように重く思うように動かない。

しかし、その隣で倒れていたハセは違った。ハセの体からは先程の痺れは感じられなくなっていた。

「孤軍奮闘・・・聞けば勇ましく聞こえますが、所詮は勇み足・・・あなたが選んだ選択はあまりに無謀だ・・・。これだけの人数を相手にどう立ち向かうと?」

確かに先ほどから数は少しずつ増え今この場にいる人数は30人余りとなっていた。ハセを頭数に入れたとしてもとても倒し切れる相手ではない。

すると、みなみは呟くように言った。

「違います。」

「・・・違う?」

「私はゆたかを助けに来たんです・・・。あなた達と争いに来たんじゃないんです。だから私は・・・」

みなみがそこまで言いかけた時だった。急にカイゼル髭の足元が揺れた。いや、この建物全体が揺れているのだ・・・ハセにはそう感じていた。

そこまで思うとみなみとカイゼル髭の間を割って入るように地面から勢いよくイワークが現れた。

唖然に取られる一同。

そんなイワークの体にしがみついたユリシがかなり慌てた様子でみなみに大声で話しかけた。

「たたたたたたた大変です!地下の牢屋にゆたかさんもハセさんもいませんでしたですぅ!」

テンパるユリシにみなみは少し控え目に視線をゆたかの方に向けた。それにつられてユリシもそちらに視線を送った。

そこには突然の地下からのご挨拶に驚くハセとゆたかの姿があった。

「あ、こちらにいらしたんですね・・・?おとり作戦失敗したですね?」

「いえそんなことは・・・それよりみゆきさんは?」

ユリシと共にみゆきもいない。ユリシと共にゆたかとハセ救出組に加わったはずなのだ。

「みゆきさんはちょっと見ておきたいところがあるとかで私とは別行動になりましたです。兵たちもなんかいなかったですし・・・」

兵がいないのは無論、この騒ぎに駆け付けたからだ。

ユリシは彼らの服の胸のマークを見ると2,3首を縦に振るとなにかを納得したような表情でイワークをボールに戻した。

「さてどうするです?逃げるですか?」

「・・・もちろんです。」

みなみはカイゼル髭を警戒しながらゆたかを抱き起こした。思いの外熱かった。

一応ハセの方も顔を向け肩を貸そうと思ったが、どうやら彼は自力で歩けるようでみなみがゆたかを抱き起こす前によたよたとユリシのいる方へ歩き始めた。

それにハセも続く。

「大丈夫です?」

「・・・あぁ。」

おそらく足に”どくばり”が当たったのだろう。ハセは左足をほとんど動かさずに移動していることがわかった。

「なぁ、髭のおじさん・・・この前の地震の原因は・・・あんたらか?」

ハセはカイゼル髭の方を見ようとしない。

「炭鉱一つを壊すつもりだったんだがいささか火薬の量が多すぎたようで・・・まぁなに、不可抗力ってやつですな?」

ハセはその言葉に答えを返さなかった。

「さて、そろそろいいですかな?これ以上モタモタしているとあとの仕事に支障が起こる。あと片づけをはじめさせて貰いますよ。」

カイゼル髭の言葉を皮切りに兵たちがモンスターボールを手にして、それを投げた。

中のポケモンはみんな同じだった。

「ストラゥ!」

「ストライクですね・・・」

「頼むぞ?ココドラ・・・。」

「キモリ・・・お願い。ゆたかを守って。」

そう言いながらみなみはゆたかを床に下ろすと自分は一歩前に出た。そしてもう一つのモンスターボールを手にした。

「ムクバード!」

「ムクー!」

ムクバードが勢いよく飛び出した。その横でユリシがピクシー、ハセがココドラを前線に置く。

「なるほど。敵に背は向けない。よくわかってらっしゃる。てっきりその少女を抱えてひたすらに走りだすのかと思いましたよ?尤もそっちの方がやりやすかったのですが・・・致し方ない。ささっと終わらせますよ?」

カイゼル髭の声と同時に30体ものストライクは一斉に飛び出した。

そして、それを迎え撃つかのようにココドラ、ムクバード、ピクシーが一斉に飛び出した。

「ストライク、”シザークロス”」「”つばさでうつ”」「”スピードスター”」

ムクバードは”つばめがえし”で相手の”つばさでうつ”を圧倒し、ピクシーの”コスモパワー”で防御面を上昇させ、ストライクの”シザークロス”を耐え、強力な”コメットパンチ”お見舞い、ココドラは”スピードスター”などもろともせずに突っ込み”アイアンヘッド”を相手の懐にヒットさせた。

しかし、やはり3人だけでの30体はキツイものがあり。最初の会心の攻撃の勢いは弱まってきた。

そのうえみなみは後ろで休んでいるゆたかが心配で気が気でなく、10秒に一度は横目でゆたかの様子を確認していた。

そして4回目の確認をした時だった。ゆたかの前に影があった。

その影が何なのか・・・みなみは一瞬で察し、慌てて体ごとゆたかの方を向けた。

それを兵たちは見逃さない。すぐさまにみなみの方へ猛攻を始めた。ユリシはそれに気づいたが、こっちもストライクを数体を相手にしていたので身動きが取れなかった。

「ストッ!」

みなみが背後のストライクに気づいたのはストライクが腕を大きく振りかざしたときだった。

しまった―――みなみがそう思った時だった。

ココドラが、ストライクめがけて”アイアンヘッド”をぶつけた。

ハセはドクケイルの羽根を動かす音で、カイゼル髭の動きをサーチしていたが、それが既に杞憂だということに気づいていた。

彼女を守る優秀なナイトがすでにそばについていたのだから・・・。


「キモリ・・・」

みなみは急に恥ずかしくなった。

目の前でドクケイルを警戒し、ゆたかを体を呈して守るキモリの姿・・・全てはキモリを信じ、ゆたかを任せたのだ。

なのに、そのことを忘れ気がそぞろになり結果的に自分だけではなくムクバードや、他の人間にも迷惑をかけたことを彼女は悔いた。

一体自分は何をやっているんだろう。自分が自分で恥ずかしくなった。みなみの前にムクバードが戻ってきた。ストライクたちの数はもう片手で数えられるほどの匹数になっていた。

ムクバードに労いの言葉をかけていた時だった。

不意にエレベーターが音をたててみなみたちのいる階に止まり、扉が開いた。

中から出てきた人物を見てハセは身を引き締め、ココドラは明らかな敵意を剥き出しにする。

サブロウだった。



6.

ハセがコーヒー野郎を騙くらかして脱獄を図るほんの数分前だった。

サブロウの顔には見ていて不快になるほどに汗をかいていた。もともと汗っかきらしいが、常日頃こんなに汗をかいていてはサウナに10分でも入れたら脱水症状を起こして死んでしまうんじゃないかと部下たちの間ではちょっとした笑い話になっていた。

ブーピックが先ほどから必死にサブロウの汗を拭っているが、それに使っているハンカチも今ではもう4枚目になろうとしている。

サブロウは電話口向こうの相手に無駄な愛想笑いを浮かべながら、無駄にヘコヘコと何回も頭を下げている真っ最中だった。

「では、ギル様・・・よろしくお願いします。明日・・・絶対に明日ですよ?お願いします。」

そう言ってサブロウは電話を切った。

疲れた顔を見せ、体に溜めこんだ二酸化炭素を思いっきり吐き出すかのような溜息をついた。

全くもってやってられない・・・サブロウの最近の口癖はこれだった。

最近というのは小早川ゆたかがこの基地にやってきた時からだ。

基本子供嫌いのサブロウは最初からこの任務には乗り気ではなかった。

だが、彼の直属の上司のギルの「すぐに迎えに行くから」という言葉に渋々この任務を進めることにした。

彼らの任務は単純だった。ただ”小早川ゆたかを誘拐する”。これだけだった。

作戦は当然のように順調にいった。

道中歩いて旅をするゆたか一行を奇襲し、掻っ攫うという実に芸のない作戦で見事に成功したのだ。

ただ、気になったのは常、隠密的な行動を厳しく重んじられてきたためにギルの「手段は選ぶな。ただし怪我はさせてはいけない。」と言葉には正直兵たちは驚きを見せた。

それはサブロウも同じだ。

だが、そんなこと今のサブロウにとってはどうでもいいものだった。

彼はゆたかを誘拐した翌日辺りから実にイライラしていた。理由は簡単。「話が違う」のだ。

ギルの言葉「すぐに迎えにいく」という言葉を信頼して行った今回の任務ではあった(でなければ他のところに回していただろう。)にも関わらずギルはその日の電話で「当分そっちへいけなくなった」と言い出した。

もちろん、サブロウは猛講義をした。だが、ギルは、そんなサブロウの怒声などお構いなしに次の任務を与えた。それが「シェンタウン鉱山の封鎖」だった。 最初、気乗りしない態度を見せていたサブロウではあったが、方法がマルマインを使った大爆発による封鎖だと聞き、承諾した。日頃退屈なサブロウにとってその任務はなかなかに単調で刺激的なものだったからだ。

それ故普段はこういう事は部下に任せるだのが、この任務については珍しく彼も同行することになったのだ。

結果は成功。マルマインの回収をしなかったのはこの音で人が駆けつけ、自分たちの存在を気付かせないためだった。

それを考慮したため少し離れた場所でわざわざイワークに穴を掘らせたのだが・・・。


ハセを捕らえようということになったのはそれから翌日のことだった。

急に彼に電話が入ったのだ。電話の相手はギルではなくザーリフというギルと並ぶ実力の持ち主・・・言うなればプルート団4大幹部の一人からだった。

あまり聞き慣れない声についついサブロウは背中をピンと伸ばし、声も裏返ってしまった。

ザーリフの電話の内容はとても短いものだった。

「お前、ばれてるぞ?」

一瞬、何を言ってるのか分からなかった。正確には彼が言ってることの意味が分からなかった。

―――ばれている。 サブロウは数秒考えた後ようやくザーリフが自分に何を伝えたいのか分かった気がした。

今、このタイミングでのこの忠告・・・例の爆破作業が誰かに見られた?

サブロウはそう考えた。

「・・・誰かに見られた・・・?」

「・・・さぁ。」

曖昧に答えるザーリフの口ぶりがさらにサブロウを不安にさせた。顔にはすでに滝のような汗が出ている。

「分かりました。こちらで処理します。ところでボスはこの事を?」

一番の不安要素だ。おそらくこの程度のことで怒る様な男ではないだろうが、だからといってみすみすこの事を報告して甘く見られるのは高いプライドを持つサブロウにとっては不愉快この上ない。

「知らない。この事はまだ君にしか喋っていない。言うなればオフレコだ。」

「そうですか・・・ではこの事はボスにはご内密に・・・。早急に問題の対処を行います。」

サブロウは電話を切ると久々に血を頭に巡らせた。

もし、目撃者がいるとしたらその彼は何をするだろう。村人に言いふらしただろうか。その可能性は極めて高い。

自分たちの命の源であった鉱山が崩れ、封鎖されたのだ。おそらく怒り狂って今頃こちらに攻めてくるような会議を行っているかもしれない。

考えれば考えるほどザーリフの顔の色は悪くなる一方だ。

「あぁ、くそっ!」 ザーリフに詳しく聞いておけばよかった。そう思ってももう遅い。彼はザーリフがいると思われる本部の電話番号を知らなかったのだ。

「・・・」

今後の対応策としてサブロウは考えた。そしてある事を思い出した。

「マルマイン・・・まだ回収してないな。」熱りが冷めるまでとは思っていたがこれじゃ冷める様子もない。

偵察がてら部下に回収させに行こう。うん、その方がいい。もし、目撃者が人に言いふらしていたとすればマルマインのことも話すだろう。そうするとポケモンセンターのジョーイがそれを放っておくとは考えにくい。

万が一この目撃者が一人で抱え込むタイプだとしたら、まだマルマインはそのままか、近くで治療を受けている可能性もある。

賭けてみよう・・・。

サブロウはそこまでで思考を停止した。


電話を切ってブーピック相手に愚痴をこぼしている時だった。

再び電話が鳴った。最初は無視してやろうと思ったがザーリフかもしれない。ならば聞きたいことがある。そう思い彼は受話器を取った。

声の主はカイゼル髭の男だった。



7.

サブロウは出っ張った腹をボリボリと掻きながら周囲を見渡した。

目の前の惨々たる光景に舌打ちを一発し、カイゼル髭をひと睨みした。

「カイゼル君。」

サブロウがそう言った時、ユリシは思わず吹き出してしまった。

おそらく彼のその髭からそういう渾名が来たと思うと無性に可笑しかった。

サブロウは言葉を止め、ユリシを一瞥すると再びカイゼル髭に視線を戻した。

「カイゼル君・・・」再びユリシが笑いだしたがサブロウは無視して話を続けた。「僕が君の連絡受けてからいろいろ準備に手間取ってここまで来ておよそ10分少々・・・とっくに事態の収拾がついてると踏んでたけど・・・僕の買い被り過ぎだったかな?」

「準備に手間取った」というのは締まるベルトがなかったのか?とハセは彼の腹肉に隠れてしまっている革製のベルトに目をやった。

その視線に気づいたのかサブロウはハセの方へと目をやった。そして皮肉な笑みを浮かべた。

「・・・君も君だ・・・。僕にコテンパンにやられた癖して、簡単に逃げ切れると思ったかい?」

「あぁ思ったさ・・・。どうやらあの時は俺もお前の実力を買い被ってたからな?」

「なにぃ?」

ハセを睨むサブロウの目が明らかに敵意を剥き出しにしていた。

それに物怖じすることもなく、睨み返すハセの度胸はなかなかのものがある。

「じゃあ、いいだろう。今度こそ分からせてやる・・・俺様の実力ってやつを・・・ブーピック!」

「ブピー!」

「へん、後でその汚い泣き面見せんなよ!」

ハセ、サブロウ両者ともにポケモンを前に置き、バトル姿勢に入る。

余裕ぶっているハセではあるが、実はポケモンバトルはこれが初めてである。

小さい頃からポケモンリーグ目指して様々なトレーニングを積んできたが、実際周りにバトルに関心ある人間は少なく本格手的なポケモンバトルを一度もしたことがなかった。

ハセの顔には緊張の顔が見えたが、同時にワクワクしたように嬉しそうな表情を見せた。

「よーし、気合入れるぜココドラ!」

「ココォ!」

「ココドラ、”アイアンヘッド”!」地面を勢いよく蹴り、ココドラはブーピックめがけて突進した。

しかし、ブーピックは尻尾をバネのように使い、ピョンとジャンプすると”アイアンヘッド”を見事にかわし、再び尻尾を使い着地した。

「・・・・!!」

そうか・・・と呟いた。

奴が昨日・・・音もなく現れたその訳・・・。あのブーピックに抱えられてきたのだ!

あの尻尾がブーピックの着地時の衝撃を減らし同時に音を殺したのだ。

何が瞬間移動・・・。ハセは苦笑した。


ハセとサブロウがバトルを繰り広げているその横ではキモリがドクケイル相手に奮闘していた。

「ドクケイル、”どくばり”!」

「キモリ、”でんこうせっか”!」

キモリは片足で床を蹴ると、”どくばり”の合間をすり抜けドクケイルの迫りそのまま叩きつけた。

これでドクケイルが地面に叩きつけられるのは4度目である。

敵ながらカイゼル髭はみなみのキモリの戦闘力を高く評価していた。

キモリは草タイプの技を持ち合わせていない。使える技は”はたく”と”でんこうせっか”の二つだけだ。

しかし、みなみは別にそれでも構わないと思っていた。これがポケモンリーグを目指すトレーナーなら草タイプの技一つは覚えさせようと躍起になって特訓するだろう。だが特にそんな思いはみなみにはひとっ欠片もない。ゆたかが守れればそれで・・・だから大袈裟な強さは必要じゃないし、無理をしてキモリが覚える必要もない。キモリは今のままでも十分にゆたかを守れている。少なくともみなみはそう思っている。

そして・・・

「ケケケ・・・」

「ドクケイル!」

6度目の攻撃でキモリは見事にドクケイルを倒していた。

もう一つの戦いで優勢だったのはブーピックだった。

ブーピックは自慢の尻尾でピョンピョン飛び回りながら確実にココドラの体力を消耗しつつあった。

「ココドラ落ち着け、影だ!影を見るんだ!」先ほどからブーピックの動きばかりに気を取られていたココドラはハセの指示通りに床を睨み、ブーピックの影を確認した。

少しずつ右の方へと移動するその影は直に止まった。その真下からココドラは高らかにジャンプした。

「”アイアンヘッド”!」

ココドラの強烈な一撃はブーピックの体を見事に吹き飛ばし、ブーピッグの体は天井に突き刺さってしまった。あれでは身動きが出来ないだろう。

そのあまりに間抜けなやられっぷりにサブロウはハセに対する言葉も忘れ上を見上げていた。

「そら、どうだ?お前よりおれの方は断然強いだろうが!」ハセが鼻で笑うい、余裕をかます。

サブロウが悔しそうにハセを睨みつけた。その時だった。

突如、天井から破壊音が起こり天井の瓦礫の礫が降り注いだ。

キモリが咄嗟にゆたかをかばうように覆い、ココドラ、ピクシーがその礫をそれぞれの技で退け、ユリシとハセを守った。

そして、その礫と共にブーピックが降りてきた。その両手には光る玉が浮かび上がっていた。

それを見たサブロウはまた調子を取り戻し「油断したなぁ小僧!」と唾を吐き散らした。

「ブーピック、”きあいだま”!」

「ブピー!」ブーピックの”きあいだま”はハセとココドラが思うよりも早くその間合いを詰めた。

「ココドラ、避けろ!」

ハセの言葉が間に合うこともなく、ココドラは弱点である”きあいだま”を食らってしまった。

「くっ・・・ココドラ!」

ハセはダウンしてしまったココドラに駆け寄りそれを両腕に抱えた。

「さぁさぁ・・・君たち全員牢屋に入ってもらうからね?」

ブーピックの後ろからサブロウが厭らしさを窺わせるような笑みをハセ達にアピールした。

「ピクシー・・・」

ユリシがハセに代わりサブロウの相手をしようとした時だった。

突然基地内全体に放送アナウンスが鳴り響いた。これにはサブロウも驚いたようだ。

「コンピュータールームにてアクシデント発生!何者かが侵入、後に破壊活動を行ったと思われる。仲間も数名やられた・・・至急応援を・・・頼む!!」

ただならぬその口調にサブロウの顔色が悪くなっていく。「一体何が・・・?おい、カイゼルすぐに様子を・・・」

サブロウの言葉にパートナーであるドクケイルをやられたばかりのカイゼル髭は少し躊躇したが、これ以上唾を吐き撒かれるのは勘弁とドクケイルをボールに戻し、やや早足でエレベーターに向かった。

「・・・?」

階段へ行こうとした時ふとエレベーターに目をやると前にカイゼル髭は首を傾げた。

緊急時のエレベーターの使用は原則として禁止している。さっきはそれを無視してサブロウが使っていたが・・・。

その為にエレベーターはサブロウが降りてきたこの階にで止まっていなければならない・・・。だが、今現在エレベーターがあるのはここより二つ下のB2で止まっている。

カイゼル髭は不審に思い、エレベーターの前で足を止めた。サブロウが後ろで何かを言っているが今のカイゼルにはあまり気にかからない。

階数表示の画面とにらめっこしながら、そのエレベーターがどこに行くのかを見届けようとした。上に上がってくる。

その瞬間彼の口元は緩んだ。奴は・・・犯人はこれを使って上にあがってくる。

B2にはコンピュータールームがあったのだ。その犯人がエレベーターを使って上に上がってくる図がカイゼル髭には見えた

目で周りに目をやり、無事なストライクを持つ兵に目配せし、エレベーターの前に集めさせた。

そして、階数表示が1Fとなった。カイゼル髭と兵はやってきた獲物に唾をのむ。ゴクリとカイゼル髭が喉を鳴らすのと同時にエレベーターの扉は開いた。

瞬間、ストライクたちが自身の両手に付いている刃を前に突き出した。・・・乗っているであろう人間の首元に突きつけ身動きを取らせないのが目的だ。

しかし、それは空振りに終わった。ストライクの刃先には誰一人としていなかったのだから・・・。

一瞬一同言葉を失ったが、それでも何かがいる気配は察することが出来たのでふと足元を見降ろした。

カイゼル髭とそのポケモンと目が合った時、そのポケモンは可愛く喉を鳴らした。

「シャワワ〜」シャワーズだった。

「全員、退避―――」一瞬で自分たちのいる状況を察し、理解したカイゼル髭は慌ててその言葉を発するが、兵がそれを理解するまでにそれは放たれた。

スプラッシュのような飛沫を”みずてっぽう”で浴びせた。

それに兵たちが怯んでいる隙にシャワーズはまるで水中を泳ぐ人魚のように軽やかにすいすいと人と人の合間を抜け去った。

「何事・・・!」

その事態にサブロウは驚き、慌ててブーピックをエレベーター側にやった。無論その間ハセ達にサブロウは背中を丸出しにしている。

ハセ達もそれに呆れて、攻撃しようという気も失せてしまった。

みなみはその隙にいつでも逃げれるようにとゆたかを両手に抱えた。


「なななななんだお前はー!?ここここいつらの仲間か?」

「シャワ?」

シャワーズは慌てふためきながら自分に話しかけるサブロウに興味を示さないように毛づくろいを始めた。

その態度に当然のことながらサブロウも黙って引き下がる訳にもいかない。

「おいこら、お前なんだその無礼な態度は・・・こうなったらお前から片付けてやる!」

そう言いながら容赦なく吐かれる唾は数滴ほどではあるがシャワーズに降りかかった。

それを見た瞬間、思わずみなみは「あっ」と声を出してしまった。

そしてみなみの声の余韻が残るうちにサブロウはシャワーズの強力な”みずてっぽう”で壁に打ち付けられた。

「な・・・な!?」

さっきまで自分に対し興味ゼロだったポケモンのいきなりの攻撃にサブロウは怒りよりも恐怖感に襲われた。

例えるなら、普段じゃれて懐いていた猫や犬にいきなりなんの前触れもなくすごい剣幕で牙や爪を出されることに近いだろう。

サブロウが次に自分が出すべき言葉を懸命に探っていた時、階段の方から足音が聞こえてきた。少々早足みたいだ。

音でハセは女性の足音だなと判断した。

「あらっ?シャワーズこれは一体?」階段に上がってきたみゆきの第一声は壁に打ち付けられ水浸しになって尻もちをつくサブロウに目をやりながら放たれた。

シャワーズが自分の水で体を洗う所を見てみゆきは現状を把握した。

「あぁ・・・どうもすいません。この子何かと潔癖でして・・・自分の体が汚されるのを激しく嫌ってしまうんです。」

みゆきはシャワーズを抱え撫でながらサブロウに数回頭を下げた。それから辺りを見渡し全員の無事を確認するとホッと胸を撫で下ろした。

「皆さん、ご無事でしたか?すいません、少し手間取りまして・・・。」

「いえいえ・・・ある意味、グッドタイミングでしたです!」ユリシが笑いながら言う。

「それよりみゆきさんゆたかを病院に・・・」

「あ、それもそうですね。では急ぎましょう。」

みゆきはそう言いながら、目を丸くしながらこちらを見る少年の存在に気がついた。

「あなたがハセさんですね?ジョーイさんから事情は伺っております。私は高良みゆき。よろしくお願いします。」そう言いながらみゆきはハセに握手を求めるように片手を差し出した。

「あぁタカラミユキね・・・よ、よろしく・・・。」これまで3人の女性に会い、助けてもらったが。この人物こそは間違いなく年上だなというはっきりとしたものがあったのと、それ以上にサブロウをさっきまでの騒ぎが彼女の仕業だと思うと少々委縮してしまった。

「あの〜そういうことは帰ってからやりましょうですよぉ?こんな敵地でやらなくても・・・」

ユリシの言葉は尤もであった。振り返ると、さっきまで情けなく腰を抜かしていたサブロウが立ち上がりこちらを睨みつけている。それでもブーピックに守られるように後ろに控えるその姿にハセは少し笑ってしまった。

「ブーピック、奴らを逃がすんじゃないよぉ・・・?」

「私がやりましょうか?」みなみが名乗りでる。彼女もゆたかをこんな目に合わせたサブロウに恨みつらみというものがあるらしい・・・。

しかし、それを制すようにみゆきがみなみの肩にそっと手を置いた。

「みなみさんは小早川さんの介抱を・・・ここは私が・・・」

そう言うとみゆきはモンスターボールからポッチャマを繰り出した。

「ポッチャマ!」ポッチャマは元気一杯に飛び跳ねている。

「ブーピック、”きあいだま”!」

「ポッチャマ、”バブルこうせん”。」

ブーピックの”きあいだま”より早く、ポッチャマの”バブルこうせん”はブーピックの体にヒットし、そのまま後ろに退がっていたサブロウを下敷きにする形でブーピックは倒れた。

「すげ・・・」

あれほど苦戦していたブーピックを一撃で・・・ハセの心にはますますこのタカラミユキという存在を印象付けることになった。



8.

それから4人は慌てて病院へと駆け込み、ゆたかを診察してもらった。

やはり押し込められていた環境が悪かったらしく、ゆたかの風邪はかなり悪化し、少し入院が必要ということだった。

みなみは責任を感じながら、”お願いします”と深く頭を下げた。

念のためにハセも診察してもらうことになった。これはみゆきの進言からだった。

それから彼女たちはポケモンセンターへ行き、ハセのココドラを含むポケモンたちの回復とハセとゆたかを無事に取り返してきたという報せををジョーイにした。

ハセの無事を聞くと、ジョーイの顔色は鮮やかなピンク色になり、喜びを両手合わせたその手で表現した。

ジョーイとしては色々と話を聞きたいところでもあったが、今日はとにかく体を休めなさいと、空き室へとみなみ達を案内した。


その夜のことだった。

ゆたかがゆっくりと瞼を開け、横で寝息を立てるハセの方へと顔をやった。

ゆたかとハセがいる病院はシェンタウンの小高い丘の麓にあった。つまり町長の家のすぐそばだ。

病院といっても診療所といった感じでベッドの数も病院というには明らかに少ないといった感じだ。

先日の地震でたくさん出た重傷者のせいで少ないベッドはほとんど埋め尽くされており、二人は唯一余っているその二つのベッドに寝かされた。

最初は遠慮していたハセだったが背中にかなりの火傷が見られ、放置していたおかげでかなり重症となっていると医師が洩らしたためみなみとみゆきにほぼ無理矢理にベッドに押しやられた。

そのため二人は唯一余っていた医者と医者夫人のベッドを借りていた。

ちなみに医者と夫人は飲み仲間らしい町長の家に厄介になる。もちろんなにかあったらすぐに駆けつけるとポケベルを渡された。。


ゆたかが今、自分のいる場所を理解すると小さくため息をついた。

「よぉ起きたか?」ゆたかは不意に自らに語りかける声に一瞬身を強張らせたがすぐにそれがハセだとわかると一気に肩の力が抜けた。

「悪りかったな。無理させちまったみてぇだ・・・。」ハセは天井を見つめながら言った。その言葉にゆたかはゆっくりと首を横に振った。

「ううん・・・そんなことないよ・・・腕を引っ張ってくれた時は凄く嬉しかったよ?あのスライディングにはちょっと驚いちゃったけど。」そう言いながらゆたかはそれを思い出したようで苦笑した。

「凄かったよ・・・お前も、みなみって姉ちゃんもみゆきっていう姉ちゃんもな・・・。お前があの檻の中で信じてただけのことはあるさ・・・。それに比べて俺は・・・」ハセはそこまで言うと言葉を切った。これ以上言うと自虐に入ると思ったからだ。それは本人も聞いてる相手も決して気分のいいもんじゃないということは彼は承知していた。

ゆたかはまた、首を横に振った。「うん、みなみちゃんも高良先輩もすっごく頼りになるよ?私もいつも助けてもらってる・・・でもそれと同じくらいハセくんも頼もしく・・・カッコよく見えたよ?」

救われた気がした。これほどまでに純粋無垢な瞳でずっと見られていたと思うと急に自分の今までの行動が恥ずかしくも思えてきた。そして、昨日牢屋で目覚め初めてゆたかを目にした時のような感情に襲われた。動悸が激しい。今日ブーピックと対峙した時もここまで動悸は感じられなかった。

「ハセ君・・・」

ハセが一人動揺していると、ゆたかが急に深刻な顔つきで話しかけてきた。口調もどこか重みが感じられる。それに比例してハセの体も少し緊張が走る。

「ん?どうした?」平静を装いながらハセは話しかけた。

「実はね・・・」ゆたかの口がゆっくりと開かれた。

それはハセを驚愕させるような内容であった・・・。


小早川ゆたかポケモン世界8日目の夜であった。




あとがき


どもぽちゃです。

久々の更新です。

ゆたかファンの人にはいろいろと謝らなければならない今回の話。とりあえずすいませんでしたぁ!!

ポケモンの活躍ももう少しあったほうがよかったか?あった方がよかったなぁ・・・。

ここで残念なお知らせ。次回はさらにポケモン臭がしないかもよ?ww

というかみなみちゃん編というのに活躍してるのがオリキャラとゆたかの件について・・・

まぁまた今度から大活躍さ!!

じゃ、次更新もなるべく早めにやるさ・・・!